こんにちは。
丸田ししゅうの丸田です。
最近はたくさんのご依頼を頂いており、毎日工場がフル稼働しているような状況です。
新規の方からもこのロゴ刺しゅうでできますか?とよくお問い合わせを頂くのですが
中にはこれはちょっと。。。とお断りしたり修正の必要があるようなデザインもあります。
じゃあどうすればできるのか?と気になってしまいますし、やり取りも多くなってお互い時間も多くかかってしまいます。
なのでつつがなく進行できるように、今回は刺しゅうで再現するにあたって気を付けるべき箇所について解説していこうと思います。
よく聞かれたり説明することなので、永久保存版にするつもりで記録していこうと思います。
それではいってみましょう。
細かすぎるデザインについて
まず、ご希望のロゴなどのデザインが細かすぎてできないという場合について触れていきます。
この細かすぎるというのを具体的に仕分けすると下記の3つの項目に分かれます。
①線が細すぎる
刺しゅうで線を表現する場合、例えば横線を引く場合であれば上下に針(=糸)が動いて線を形作っています。
これを専門用語でサテンステッチといいます。
この針の上下の動きは0.8mmまでと明確に設定していまして、刺しゅうの場合、0.8mm以上の線しか糸で表現できないということになります。
ただ上下運動のサテンステッチではなくて、単純に横に針(=糸)が動いて線を形作ることもできなくはないです。
この動きはランニングステッチと呼ばれるもので、細い線でも再現できますが、縫製ミシンで施すように—–と糸の繋ぎ目が見えてしまうのが特徴で、当社では極力こちらは使用しないようにしています。
なぜかというと糸が途切れ途切れに見えるのは縫製としてはよくても、柄を構成する上ではあまりきれいに見えないのと、糸抜けが発生しやすくなることがある為です。
なので、線を構成する上で0.8mm以上というのは必須条件と思って頂きたいです。
②希望サイズが小さすぎる
刺しゅう加工を施す場合、3cm角程度のワンポイントで入れたいという方は多いです。
ただ上記の線幅を踏まえて頂いた上で、デザインを構成する全ての線が0.8mm以上に収まるかどうかという点は製作前に検証する必要があります。
よくひっかかるのはフレッドペリーやラルフローレンを意識したようなポロシャツや、キャラクターのハンドタオルなどです。
特にコピーライトの©を含めて○○cmに収めて欲しいと言われたりするとお手上げ状態の時もあります。
刺しゅうは万能ではないので、やはりできないことは早めの段階でできませんとお断りする必要があります。
③縁取り線がある
先ほど、最低線幅は0.8mm以上とお伝えしましたが、それはあくまでも単純に線のみを描く時の場合です。
デザインによってはロゴやキャラクターに縁取り線を入れたいというご要望も多く頂きます。
この縁取り線は製品としてみれば無いより有る方が格好よかったり自然だったりするのですが、加工する側の視点からすると少し大変な作業になります。
というのも刺しゅうはカラーコピーのように同時に全ての色を着色するわけではなく、まず中の部分を埋めて、その後に縁取り部分をサテンステッチで入れていくという工程が必要になる為です。
刺しゅうは糸で生地を引っ張るので、必ず歪みが発生します。
さらに生地の柔らかさ、厚み、ストレッチでその歪み具合は異なりますし、糸も縮んだりします。
その結果どうなるかというと、データ通りに縁取り線が同じ箇所に入らず、埋め部分が縁取り線からはみ出したり
足りなかったりということがよくあります。
イメージ的には埋め部分の端を縁取り線で隠すのですが、ピンポイントで線をのせるのが難しい為、縁取り線に関しては1.5mm以上の線幅が必要と定義付けしています。
キャラクターなどは中の部分も多色で展開されることが多いので、歪みも大きくなりどのタイミングで縁取り線を入れるかというのも非常に大事になってきます。
その不安定で難しいところを形にするのもデザイナーの腕次第であり、刺しゅう加工のおもしろいところですね。
どうすれば改善できるのか
受付時にこのままだと難しいと言われる点はお分かりになられたかと思います。
ではどうすれば希望のデザインを刺しゅうにできるのか、という点について2つの方法を提案させて頂きます。
①線自体を太くする
線幅0.8mm以上というのが条件になっている点は何度も説明した通りです。
なので0.8mm未満の線がある場合には、単純に全ての線を太く調整するという方法があります。
お客様の方で太い線にして頂いてもよいですし、当社側で線のみを太く調整することもできます。
それにデータ上では太く見えても実際に刺しゅうをしたら若干縮んで、そこまで違和感が無いという方がほとんどです。
中には太くなるのは嫌というこだわりの強い方も中にはいらっしゃいますが、0.1mm単位での話なので、当社としてはこちらの方法をお勧めしております。
②デザイン全体のサイズを大きくする
もう一つの方法は、ネックになっている細い線を再現可能な太さになるまで、柄全体のサイズを大きくすることです。
キャラクターの縁取り線の場合などは、線だけが0.1mm太くなるだけでも印象が変わってしまう場合もある繊細デザインなので、他の部分との兼ね合いで全体を大きくしてしまう方が違和感も少ないことが多いです。
デメリットとしてはサイズが大きくなると糸の使用量も増える為、お値段が上がってしまう点が挙げられます。
また、アイテムが20cmのタオルと決まっている場合に刺しゅうを3cm→5cmにしてしまうと、刺しゅうの再現度は上がってもタオルとのバランスが悪くなってしまい、企画自体がボツになるという場合もあります。
そのような場合はタオルを25cm角にしてもらうとか、刺しゅうサイズを3cm→4cmにして線も若干太らせるなど、双方にとって満足度の髙い落としどころを提案させて頂きます。
その他の注意点
上記3点が主な気を付けるべきポイントですが、他にも注意点がいくつかある項目がありますので、こちらでまとめて紹介していきます。
企画が進んでしまう前に、事前に把握しておいて頂くとスムーズかと思います。
①3D加工について
ウレタンを糸で挟み込んで立体感を出す3D加工と呼ばれる加工方法があります。
こちらの注意点としては、下記の通りです。
①サテンステッチのみ(線幅2.5~10.5mm程度)
②キャップ、ハット、ワッペンのみ対応可能
線が細いとウレタンに針を入れた際にボロボロになってしまうので、最低2.5mm以上の線幅が必要になります。
また太すぎるとサテンステッチで対応できないので、キャラクターなど線ではなく面のデザインは3Dにできません。
また、ウレタンを挟み込むのに生地はある程度固さが必要になるので、基本的にはウェア全般にはできないものと認識頂きたいです。
市販のブランド品でたまにスウェットに3D加工入れていたりしますが、縫製前の裁断生地の状態で加工しているものと思わまして、当社で担当するのはリスクの大きさからお断りしております。
②加工位置と最大サイズについて
これもよくあるのですが、具体的には下記の通りですので、参考になれば幸いです。
①Tシャツやポロシャツの胸ポケットに重ねるように刺しゅうは不可
②トートバッグの右下は横と下をそれぞれ5cmスペース空ける必要有り
③メッシュキャップの背面は不可、側面は汗滑りごと縫えば可能
④ウェアの袖は幅8cmまで
⑤リストバンド・靴下は4cm角まで
⑥キャップ正面は縦5~6cm×幅12~14cmまで(帽子の作りにより異なる)
まとめ
刺しゅう加工の注意点についていかがでしたでしょうか?
刺しゅうはかなり専門的な加工なので、問い合わせてみないと何か懸念点があるかどうかもわからないことは多いかと思います。
全てがダメなのではなくて、一部の箇所がネックとなっていることも多いです。
ただ、抑えておきたいポイントも少なからずありますので、アパレルやグッズ関係の法人様など、度々ご連絡頂く方に関しては一緒にレベルアップできるようフォローさせて頂ければと思います。
その他、ご質問がありましたら下記までお願い致します。
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宜しくお願い致します。